水がめ座ダイアリー

08-06-25|いってきます  2008.06.25


↑今回は行かないけれど、ユトレヒトに訪れるたびに見上げるお気に入りの窓と薔薇。素敵。

「結婚式が終わったら、あっと言う間に出発かなぁ」なんて言っていたその日が、とうとう来ました。
今日からベルリン、ドレスデン、バルトの国々とたぶんヘルシンキを巡る、13日間の旅の始まりです。
初夏のヨーロッパを訪れるのはこれで2回目で、嬉しい反面、去年の辛かった旅のことをふと、思い出します。
私にとっての初めての夏のヨーロッパは、苦い思い出の場所。
去年、下調べが足りなくて、期待していた蚤の市がほぼ全て開かれていなかったこと、
「水がめ座通信」で少しだけ触れたので覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。

あのとき書かなかった事も少しだけあって、それは今わたしが心の中で指針にしているひとつだったりします。
今日は、出発までの時間、そのことを書こうと思います。


あの旅のなかで、当初私はフィンランドに行くつもりは全然なくて、北欧はまだまだ私にとって遠い場所のひとつでした。
それでも突然フェリーに乗って行く事に決めたのは、前半のオランダとドイツで祝祭日にぶつかってしまい、
予定していた蚤の市がほとんど閉まっていたから。そのため試算していた買付け量にまったく満たなかったから、でした。

「ここならきっと…!」と思った最後の場所ですらがらんとしていたその時には、目の前の壁がいよいよ高く感じられ、
一緒に旅していた友だちに「しばらくひとりになりたい」なんて私らしくない発言をしてしまったほど。
それで、とにかくお店を守るために何とかしなくては!!と、現地からS.O.S.を出して情報をかき集め、
ヘルシンキ行きを決意したのでした。

港に向った当日の朝は、前日の青い空が幻だったかのようにどんよりと曇って、私の心の迷いを見ているかのようで、
無理やり明るい気持ちになろうとデッキで歌を歌ったり、絵を描いたりして過ごして…。
ほとんど予備知識のないまま訪れたヘルシンキの街では「キートス!(ありがとう)」という可愛らしい言葉に惹かれて、
そして口にする程楽しい気分になるようで、意識してその言葉に触れていた気がします。
トラムからトラムへ、裏道から裏道へと駆け回り、空っぽだったバックパックを何とかぱんぱんにして、その日は帰途に着きました。

いよいよ夜の闇が迫り、私が乗った帰りのフェリーがタリンの港に近付く頃。
乗船客たちは皆「私がいる側と反対側と、どちらが出口になるのだろう?」と
一喜一憂していて、それがなんだか面白く、私はとなりに立っていたおじいさんと目で「ふふふ」と笑い合いました。
きっと、あのとき2人とも同じ事を考えていたと思う、「この一喜一憂が愉快だな」と。

結局、フェリーのドアは私たちがいる側とは反対の方が出口になり、そしてまた私たち2人は「反対側だったね」と目で解り合った、
その時でした。
おじいさんが、ふと考えるような、迷うような顔をして、たった一言「ヘルプ・ユー」と小さく口にしたのです。

私はすぐに「あぁそうか、おじいさんは私の両手のおーおきな袋が重そうに見えるんだ」と思いました。
でも実際はかごばっかり30個入っているだけで軽かったので、「大丈夫。これは 本当は とっても軽いです」と、
できるだけシンプルな英語と、大げさなジェスチャーで答えて、にっこり大きく笑いました。
心配そうなおじいさんに、ちゃんと安心してもらえるように。

その後、人混みに流されて私たちの距離はどんどん離れてしまって、最後に振り返ったときにはおじいさんの姿は遠く、
それでももう一回ありがとうを言いたくて、ずっと向こうのおじいさんに「ありがとうー!」と大きく大きく手を降りました。
おじいさんは、恥ずかしそうに胸元で小さく手を振って、そして小さく、でもにっこりと笑ってくれました。

港から宿への帰り道、なぜだかぐっと嬉しくて、こんなに嬉しいのはなんでだろう?と考えて、ひとつ解りました。

「あのときおじいさんがふと迷うような顔をしたのは、おじいさんの世代にとって英語はきっと理解できる言葉ではなくて、
たぶんなんて言えばいいのかはすぐには思い浮かばなくて、でも助けたくて思いだしてくれたんだ」
その、遠い国で受け取った人の優しさに、ただただ救われるような思いがして、それで嬉しかったのです。

そのことに気付いたら、ぽろぽろと自分の今の気持ちがわかってきて、そのとき私がどれだけ気を張っていたか、
お店を守るためにとにかく何か見つけなくては、と景色のひとつも見ないで雨に打たれながら歩いて歩いて、
心が固く強ばっていた事を知りました。

歩きながらひとつ、大好きな歌を歌って、そしたらもう涙が止まらなくなってきて、
しかしこの涙は拭かずに流しておこう、と思ってもう一つわかりました。

私はこのことを、日記でもいいし手紙でもいいし、いつか誰かに伝えよう、と。
私が届けたいのは、雑貨とそして今日まで知らなかったはずの人から貰ったあんな優しさだ、と。
届けたいし、届けなきゃいけないな、と思いました。これが、私が指針にしていることです。
恥ずかしい事に、まだまだ、全然表に出ないのですが…(本当にごめんなさい)。


あれから1年が経って、その中でまだまだ力不足、気持ち不足なところがあって、私はまだ役目を果たせていません。
ようやく少しずつ形にできたこともあるし、でも「これから」のことばかり…。
申し訳ないな…と思う連続でもあります。が、自分を鍛えていくしかない!です!

買付けというお店のなかの1つの過程では、たぶん言葉の響きがもたらす想像よりも大変なことがちょっとあります。
ありますが、それを補って余りに余りある程の、きらきらしたものに出会えるから、
全て(良い事も悪い事も含めて)が「楽しい!」になって、それが原動力です。


今日から始まる旅のなかで、きっとまた沢山の人と話して、沢山の思い出を作ってくると思います。
笑顔の伝染だー!と、そのことが楽しみで仕方ありません。
いつも書きますが、わしわし歩いて、いいものといい笑顔を沢山見つけてきます!

さぁ、少し眠って、そしたらシャワーを浴びて、出発だ。行ってきまーす!

(今日は沢山書いて、すみません…)

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